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 登場人物 ストーリ キャスト・豆知識 大長今テーマ曲 オナラ歌


49〜52話


第49話 「つかの間の和み」

即位前、自分の元へ酒を配達に来た幼い娘がチャングムであることを思い出した中宗。チャングムとの縁を感じ、より信頼感を深くする。今一度チャングムに願いをたずねる中宗に、チャングムは活人署(ファリンソ)への異動を願い出る。活人署(ファリンソ)での初日、チョンホが仕事の前に立ち寄ってくれていた。しかし素っ気ないチョンホに、チャングムは不安を感じる。チャングムのいなくなった宮中では、水剌間(スラッカン)、内医院(ネイウォン)ともに立て直しを図っていた。水剌間(スラッカン)では新しい最高尚宮(チェゴサングン)が選ばれることに。そんな時、皇后がチャングムを宮中に呼び戻す。皇后は、皇太子の義弟となる自分の息子キョンウオン王子の行く末を案じていた。チャングムに助けを求める皇后。皇后の真意を知ったチャングムは思い悩み、活人署(ファリンソ)にチョンホを訪ねる。一方、皇后とチャングムの会話の一部を立ち聞きした中宗は、ある決断をする。

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自分が王位に着く時、重要な役割を果たしたあの酒屋の少女がチャングムだったと知って不思議な縁に驚き、そして喜んでいた。チャングムがいなければ、王の人生は全く違ったものになっていたかも知れない。しかも、彼女は王の命を救ってくれたのだ。
王は更にチャングムの望む褒美を与えようとする。だが、チャングムの望みは意外なものだった。活人署(ファリンソ)に行かせて欲しいというのだ。
活人署は貧しい人々を治療するための施設で、一日中病人がひっきりなしに訪れる過酷な職場だった。
チャングムは活人署で更に多くの患者を診察し、医術を高めたいと考えていたのである。王は何故わざわざ苦労の多い活人署に行きたがるのか訝しむが、宮中にいる限り絶えず重圧の中で診脈しなければならないことも考慮し、暫くの間だけという条件をつけてチャングムの願いを聞き届ける。
「もしそちが男なら・・・是が非でも余を担当する医官に登用するところだ」
内医院では、オ・ギョモに代わって、イ・グァンヒが都提調となる。イ・グァンヒから医官たちに正式な辞令が出される。シン・イクピルは僉正に昇進し、御医として王を担当。チョン・ウンベクは判官に昇進し、シン・イクピルを補佐することとなった。だが、イ・グァンヒは必ずしも狐惑病事件の経緯を快く思ってはいなかった。結果的に王を治療することはできたものの、内医院の秩序を無視していたのは否定し難い事実なのだ。彼は今後修練の体系を厳しくすることを要求する。
イ・グァンヒが退出した後、ミン・ジョンホは内医院の一同に許しを請う。内医院の秩序を乱した張本人は紛れもなく彼だからだ。だが、シン・イクピルは詫びる必要はないと彼に答える。
「我々には教訓となり、刺激を受けました。今後一層精進致します」心なしか安心した表情を浮かべるミン・ジョンホ。
だが、その和やかな雰囲気もチャングムの活人署に行くという言葉で一変してしまう。彼女ほど優秀な医女が活人署で働くなど、過去に例のないことだった。
シン・イクピルとチョン・ウンベクは彼女が活人署に行こうと考えた理由を問い質す。目的を果たすため、特定の病だけを徹底的に調べ尽くしたことで彼女は功績を上げることができた。だが、医員は本来ありとあらゆる病に精通すべきであり、彼女はもっと多くの患者に接し、多くのことを学ぶべきだと考えていたのである。チャングムがそこまで医員としての道を究めようとしていると知り、シン・イクピルもチョン・ウンベクも彼女を快く送り出すことにする。
医女仲間に挨拶をするチャングム。チャングムに厳しかったピソンも、医女の可能性を世に示してくれたと彼女を認める。
そして、チャングムとシンビはお互いに努力して朝鮮一の医女になろうと誓い合う。かつてチャングムの母とハン尚宮がそうしたように。
ヨンセンの出産のことをシンビに託し、チャングムはヨンセンに別れを告げる。やっと戻った宮中から再び出て行こうとするチャングムにヨンセンは不満げだが、チャングムの決意は固かった。
中殿も必要な時は必ず駆けつけることを約束させ、チャングムが活人署に行くことを了承する。
希望に満ちて新たな道を歩み出すチャングム。その道がこれまで歩いた道よりも遥かに険しいものであることを彼女はまだ知らない。そして、中殿との約束がどれほど重いものだったかも。
チャングムが活人署に行くと聞き、トック夫妻も驚く。あれだけの功績があったチャングムが何故活人署などに送られるのかと二人は怒るが、トックの妻はチャングムが自分で行くと言い出したのではないかと気づく。長年母親代わりになってきた彼女はチャングムの性格をすっかり見抜いていたのである。一方、チャンドクは処方を決める権限のない内医院にいるよりも医術を深めることができると、活人署行きに賛成する。
活人署への初出勤の朝。チャングムはそこで意外な人物を目にする。ミン・ジョンホが子供たちに凧を作ってやっていたのである。病気に勝った褒美だといって子供に凧を与える彼の姿を見て、チャングムは思わず微笑んでいた。
だが、ミン・ジョンホの態度は妙に冷たい。
「優れた医者とは、ただ病を治すだけでなく、病人に病と戦い病に打ち勝つ勇気を与える医者だといいます。私より立派なお医者様ですね」
「そうですか?」
「でも何故こんなに朝早く・・・」
「仕事の前に寄っただけです。活人署がどんなところか見ておこうと思いまして」
「それだけですか?」
「他に何か理由が必要ですか?」
そして、ミン・ジョンホはそのまま立ち去ってしまう。彼が何故突然こんな態度を取るようになったのか、チャングムには見当もつかなかった。
活人署はまさに戦場だった。ひっきりなしに病人と怪我人が訪れ、休む暇もない。だが、チャングムは患者の血膿を口で吸い出し、高価な薬を使わずに治療する方法を教え、夜遅くまで患者と真摯に向き合い治療して行く。
帰り道、口実を作ってミン・ジョンホの家を訪ねるチャングム。だが、彼の態度は相変わらず冷たい。子供たちに文字を教えに来て欲しいと頼むチャングムに、ミン・ジョンホは時間がある時に行くと答えるだけだ。本当は彼に毎日会いたくてそんなことを頼んだのだが、チャングムは本当の理由を言えずじまいだった。
翌朝、二人はまた活人署で出会う。
「あ・・・毎日来ていただけますか?」
「何故?」
「習うのに・・・間が空きすぎると・・・」
その答えを聞いて踵を返すミン・ジョンホをチャングムは呼び止める。
「あの、実は・・・!」
「・・・毎日お会いしたいのです」
「子供たちにですか?」
「いいえ、私がお会いしたいので・・・」
「最初からそう言えばいいでしょうに!」
「え?では、私をからかわれたんですか!?」
「違いますよ。今まで気をもませられっ放しだったから仕返しです!」
破顔するミン・ジョンホにチャングムはやっと安心する。
ミン・ジョンホは毎日活人署で子供たちに字を教えるようになった。宿題をして来なかった子を叩こうとするミン・ジョンホと、病気の子だからと庇うチャングム。忙しくはあったが、チャングムにとってはミン・ジョンホとまるで夫婦のように過ごす幸せな毎日だった。
その頃、水刺間では新たな最高尚宮選びが始まっていた。現職の最高尚宮が着任からわずか三ヶ月で、高齢のため職務を遂行できなくなっていたからである。そして中殿の息子である慶源大君(キョンウォンテグン)の誕生祝いの料理で競合を行い、最も優秀だった者が最高尚宮に任命されることになる。チョン尚宮が始めた競合による最高尚宮選抜制度が復活したのである。その候補者の中にはミン尚宮も含まれていた。
ヨンセンの前では彼女を安心させるために最高尚宮になる気はないと言ったものの、ミン尚宮は迷う。彼女は決して実力が劣っている訳でもなく、チョン尚宮の遺志を受け継ぐ唯一の尚宮でもあるのだ。
慶源大君の誕生祝いが華やかに催される。いよいよ競合が始まったのだ。
競合の結果、次代の最高尚宮が決定する。選ばれたのは何とミン尚宮だ。
かつて、「手柄を立てる機会も与えられない」(第6話)と愚痴をこぼしてばかりいた彼女が、遂に最高尚宮になってしまったのである。
最高尚宮になれたことは嬉しいものの、内心不安でたまらないミン尚宮。体調の優れない前最高尚宮に代わってすぐ王の食事を用意するよう命じた長番内侍にも、着任までしばらく時間をもらえないかなどと非常識なことを頼んでしまう有様だ。
ミン尚宮はチャングムを頼って、トック夫妻の家にやって来る。トック夫妻もミン尚宮が最高尚宮になったという話には驚き、にわかには信用してくれない。やっと信用はしてもらえたものの、今度は二人に心配されてしまう。
「確かにおめでたいことではありますが・・・この方に・・・」
「勤まるのかね?」
ますます不安になったミン尚宮は、帰宅したチャングムを見るなり抱きついて泣き出してしまう。
チャングムはミン尚宮に、彼女が水刺間にいた頃ハン尚宮に学んでいた頃の覚え書きを渡し、ハン尚宮もかつてミン尚宮の料理を誉めていたことを教える。ミン尚宮は争いごとから常に距離を置き、ただ料理だけを一心に極めてきた。そのことが彼女の料理を着実に高めていたのである。その話を聞いてやっと気持ちを落ち着けるミン尚宮。チョン尚宮とハン尚宮の教えは、今ミン尚宮に受け継がれたのだ。チャングムもこの覚え書きが、それを活用できる人の手に渡ったことを喜ぶ。
その喜びを味わう間もなく、シンビが中殿からの使いとしてやって来る。中殿からの呼び出しがかかったのだ。チャングムを巡る運命の渦は、彼女の意志とは関係なく再び動き出そうとしていた。
初めて王の食事を出すミン尚宮。やはり王の前では緊張してしまい、言い訳がましいことばかり口にする彼女だったが、王の「美味である」という一言に加え、中殿はミン尚宮の作る味噌鍋を好んでいたという話を聞き、彼女はやっといつもの調子を取り戻す。
「実は私だけの秘法がございまして・・・」
「そうか、謙虚なだけではなく努力家なのは感心なことだ」
「はい、謙虚さには自信がございます」呆れる長番内侍。
久しぶりに中殿と対面し、心労の余り体調を崩しているという彼女を心配するチャングム。中殿と慶源大君の宮中での立場は微妙だった。明国から王位継承権を認められているのは東宮であり、東宮が死なない限り慶源大君が王位に着くことは有り得ない。それは即ち中殿が東宮に害意を抱いても不思議ではないということだ。王の病気を治療するために中殿が王宮の習いを次々と無視したことで、彼女に対する不信の目は以前よりも強くなってしまったのだ。中殿はこの子を産まなければ良かったとまで思い詰めていた。
慶源大君の前でそのようなことを口にしてはいけないとたしなめるチャングムに中殿は沈痛な面持ちで話す。
「今から教えねば。宮中はそういう所だと。王室の歴史が物語っているではないか。常に生きるか死ぬかなのだ。そちが王様をお救いしてからというもの、私に対するみなの視線がただならぬ。王様が生きていらっしゃる今でさえそうなのに、東宮様が王位に着けば・・・」既に慶源大君を呪った札まで発見されており、中殿は気の休まる時がないという。中殿がチャングムを呼び戻した理由はそこにあった。東宮の世話係になり、自分に従うよう命令する中殿。だがチャングムにはその言葉の意味が解らない。
中宮殿から下がる途中、至密尚宮はチャングムを部屋に呼び、中殿の意図を伝える。東宮が王位に着けば、中殿も慶源大君も今の地位を失う。しかも、今の段階で呪い札が出てくるようでは、東宮が王位に着くことなく没した時のことを考えて事前に慶源大君を亡き者としようとしている者もいるに違いない。だが、東宮が死に、慶源大君が生き残れば話は別だ。東宮は生まれつき厥心痛(狭心症)を患っている。遠からず死ぬ運命なのだ。もしチャングムが医官にも悟られず東宮を暗殺することができれば・・・。
チャングムは悟る。チェ一族が王宮を蝕んでいたのではなかった。王宮という閉ざされた世界がチェ一族を生み出したのだ。チェ一族が滅んだ今、チャングムがその役割を担わされようとしていた。
中殿の指示により、チャングムは東宮付きの医女に任命された。王と中殿に加え、大妃や東宮の妻が見守る中、チョン・ウンベクとともに診察に当たるチャングム。病気の息子を心配する義理の母。そして孫を見守る祖母。一見暖かい家族の姿の裏には殺意が渦巻いていた。
重圧に耐えかねたチャングムは活人署にミン・ジョンホを訪ねる。活人署での日々が懐かしいというチャングムにミン・ジョンホは言う。
「私も宮中よりここがいい。子供たちと一緒に過ごす時間はとても楽しいです。・・・いいことがある。田舎で私と一緒に書堂(ソダン)と小さな薬房を開きませんか?一つ屋根の下で」
だがチャングムはその言葉を聞いて泣き出してしまう。
「おや?・・・嫌ですか?泣きたいほど?」
「ええ、嫌です!小さい薬房は嫌です。大きくして下さい!患者さんを大勢診られるように!」涙の理由をそう誤魔化した彼女の胸にはある決意が宿りつつあった。
王と中殿、そして孝恵公主の目の前で東宮を治療するチャングム。
「中殿の配慮でそちが世話をしてくれて、余は安心しておる。男なら大殿の医官にしたいが・・・誠に残念だ」だが中殿の表情は険しい。
二人きりで話す中殿とチャングム。
「苦しいであろう。私もそちに話すまではとても辛い思いをした。でもやっておくれ。辛いことだからこそそちに話したのだ。そちには私に返さねばならぬ借りがある。返しておくれ。それが世の常だ。今回はそちが助けておくれ。さもなければ・・・そなたを失いたくない」
チャングムはミン・ジョンホとともに市場に行き、彼にノリゲをねだる。そのノリゲのお返しにとチャングムがミン・ジョンホに渡したのは父の形見のノリゲだった。
「これは・・・お父上の形見でしょう」
「私が持っているもので、一番大切なものを差し上げます。これには幼い頃の思い出、ナウリと出会った思い出が詰まっています。受け取って下さい」
その夜、チャングムはまんじりともせず過ごす。中殿がいなければ、復讐を遂げることなく命を落としていたはずだ。だが、その代償がチェ尚宮と同じ存在になることだったとは・・・。ミン・ジョンホに「一番大切なもの」を渡し、チャングムは意を決する。
チャングムは中殿の頼みをはっきりと断る。・・・自分の命と引き替えに。だが、チャングムを死なせたくない中殿は、医女ではなく自分の至密尚宮として側にいるよう命じるのだった。いつ命を落とすことになるかわからないこの王宮の中で、中殿が頼る相手はチャングムしかいなかったのだ。
だが、その会話はたまたま中宮殿を訪れた王に聞かれていた。何とかその場を取り繕おうとする中殿だったが、既に手遅れだった。
かつて王はオ・ギョモらを処罰することで、東宮と中殿の板挟みになることを悩んでいた(第46話)。まさにその通りのことが起こりつつあるのだ。父として、夫として、王は決断しなければならなかった。
王はチャングムをヨンセンの居所に呼び出し、中殿がチャングムに何を頼んだのか厳しい口調で尋ねる。
「殿下・・・お答えできません!どうか私を殺して下さいませ!どうか、いっそのこと私の命をお取り下さいませ!」
チャングムはミン・ジョンホの姿を求めて走る。だが、二人は入れ違いになってしまい、なかなか会うことができない。
彼女がやっとミン・ジョンホの姿を見つけた時には、すっかり日が暮れていた。
「そばにいると仰ったのに!どこにいらしたんですか?いつもそばにいると仰ったのに!どこにいらしたんですか?ずっと探していたんですよ」
「私を攫って逃げたいと仰いましたよね?どうか、そうして下さい!攫って逃げて下さい。お願いします!お願いです!訳は何も聞かずに・・・」
チャングムの話を聞いたミン・ジョンホは、官職を捨て彼女と共に逃げようと決める。
だが、ミン・ジョンホが大殿に伺候した時、そこでは大変な事件が起こっていた。王がチャングムを御医にせよと言い出したのである。チャングムを救う決意をしたのはミン・ジョンホだけではなかったのだ。
その頃、チャングムは書き置きを残してトック夫妻の家を出ていた。
果たしてミン・ジョンホはチャングムを救うことができるのだろうか?



第50話 「波紋」

チョンホは宮中に辞職願を出し、チャングムはトックの家に置手紙を残し、二人で船に乗る。二人の逃亡に気付いたトックは後を追いかけ、チョンホの上司右議政も追っ手を送る。チャングムを主治医に命じるという中宗の発言は、宮中に大きな波紋を呼んでいた。左議政はチョンホを従える右議政の策略かと疑い、しきたりを重んじる皇太后の憤りは激しかった。また内医院(ネイウォン)内でも、医務官の面子をつぶしたチャングムへの反感が生じていた。右議政の追っ手に行く手をさえぎられたチョンホとチャングム。チョンホは考え直し、チャングムを連れ宮中へ戻ることに。その道すがら、右議政らの思惑とは逆に、チョンホはチャングムに王の主治医を引き受けるよう説得。チャンドクも支持する。宮中へ戻り、王命を受けたチャングムへの非難は高まる一方。チャングムを支持するチョンホは、上司の右議政だけでなく、儒生や学識者からも造反される。内医院(ネイウォン)は全員、辞職願いを提出したイクピルに従う。また、チャングムに中宗との拝謁を取り持ったヨンセンは皇太后に呼び出されることに。ヨンセンは心痛のあまり産気づくが、産み月にはまだ日にちがあった……。

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ミン・ジョンホは官職を辞し、チャングムと共に王宮を去る。
二人だけで生きられる場所を求めて船出するチャングムとミン・ジョンホ。彼らを待っているのは逃亡者としての生活であったが、その表情は明るい。
だが、王がチャングムを主治医官に任命すると言い出したことで宮中に混乱が起こりつつある今、承政院の高級官僚であるミン・ジョンホが職を辞するなど許されることではない。右議政はミン・ジョンホを連れ戻すよう、彼の副官に命じる。
トック夫婦もチャングムの置き手紙を見つけていた。トックは慌ててチャングムを探しに行くが、トックの妻はそのまま行かせてやろうとする。ミン・ジョンホと結ばれるにはそれしかないからだ。
二人を乗せた船は、ゆっくりと漢江を上って行く。
「恐いですか?」
「ときめいています」
「ときめいている?でも、恐いでしょう?」
「嬉しいです。胸が弾み、晴れやかです」
「私は恐いです。これは一夜の夢ではないかと・・・とても恐いです」寒風の吹き荒ぶ甲板で、二人の心は温かかった。
二人を追うトック、そして左賛成の命を受けてミン・ジョンホを探す副官たち。トックは二人が梨浦(イポ)の渡しに向かったことを突きとめるが、早合点して済物浦(チェムルポ)行きの船に乗ってしまう。そのやり取りを聞いた副官たちは陸路で梨浦へと向かう。
医女ではなく、医官としてチャングムに王を担当させるという命令は内医院にも大きな波紋を呼んでいた。今度は内医院の秩序を乱すなどという程度の問題ではない。国法を完全に無視した命令なのだ。
やっとチャングムを認めてくれた医女たちも、この件で再び彼女への反感を強めていた。特にウンビはチャングムの行動を徹底的に批判する。
大妃は中殿を呼び、王を何故止められなかったのかと彼女を責める。王の妻であると同時に、内命婦を束ねる立場にある中殿の責任も決して軽くない。
イ・グァンヒや司憲府の大司憲といった旧勢力に属する面々は、口々にこれがミン・ジョンホの企みであると右議政を非難する。自分たちの勢力を強めるために、右議政側の人間を王の周辺に配置しようとしているのではないかとまで言われ、右議政の立場は悪化する。
更に右議政と兵曹判書はミン・ジョンホがチャングムを連れて出奔したことを知らされ、顔色を変える。このままでは二人が死罪に処せられるだけでなく、右議政たちや、王までもが苦しい立場に追い込まれることになるだろう。ミン・ジョンホを連れ戻し、チャングムには王の命令を拒否させねばならない。
チャングムがミン・ジョンホと共に逃げる道を選んだことを認めていたトックの妻も、王がチャングムを主治医官に任命しようとしていることをシンビから知らされ愕然とする。もう宮中から遠い場所に逃げれば済む問題ではなくなってしまったのだ。
そんな宮中の混乱も知らず、二人は雪道をどこまでも歩いて行く。
「私のせいで全てを失うかも知れません。それでもよろしいのですか?
私のせいでご身分も奪われるかも知れません。それでもよろしいのですか?筆を持っていらした手で土を耕すことになっても、本当によろしいのですか?草を食べて飢えを凌ぐことになっても、それでもよろしいのですか?」
「同じことを何度聞いたら気が済むのですか?大丈夫です。私なら大丈夫」
チャングムはそっと手を差し出し、ミン・ジョンホはその手を力強く握りしめる。
チャングムを負ぶって川を渡ろうとするミン・ジョンホに、チャングムはかつてチョンスがミョンイのために先回りして飛び石を置いておいた話を教える。母はそれを見て父に惹かれたのだと。
「そうでしたか。なら、そう言ってくれないと。それじゃあ、一度降りてもう一回歩いて来て下さい。飛び石を置いておきますから、知らないふりして来て下さい」
「そんなことできません」
「さあ、降りて!」
「嫌です」
「ほら、早く降りて!」
やっと渡し場に着いた二人を、部下を引き連れたミン・ジョンホの副官が待ちかまえていた。そして、その後には右議政までもが・・・。二人の逃避行は終わった。
宿屋の一室で右議政はミン・ジョンホを諭す。彼がその真っ直ぐな気性と優しさ故に判断を誤ることがあるのではないかと、幼い頃から彼を知る右議政は心配していた。まさに今回の件がそうだった。チャングム一人のために、右議政たちだけでなく、彼らを信じて朝廷に復帰した者たちまでもが窮地に陥ろうとしているのだ。
右議政から少しだけ時間の猶予を与えられ、ミン・ジョンホはチャングムと二人だけで屋外に出る。林の中で、ここは書堂と薬房を開くのに適した場所だと話し始めるミン・ジョンホ。そして彼はチャングムに幼い頃いくら母に叱られても、学ぼうとすることを止めなかったことを思い出させる。
「行かなければ・・・今行かなければ、そんな夢は二度と見られないでしょう。行きましょう、一緒に」そう言ってミン・ジョンホは彼女にそっと手を差し伸べる。
だが、右議政の話を戸外で漏れ聞いていたチャングムはミン・ジョンホの手を取りはするものの、
「行けません」と答えるのだった。
そして二人は右議政に命じられるまま、漢陽に向かう船に乗る。だが、ミン・ジョンホは船の中でチャングムに、決して主治医官になることを断ってはいけないと言うのだった。身分や性別の壁に阻まれながら、それでもチャングムは不可能を思えることを成し遂げてきた。そしていま、歴史上初めて女の主治医官になろうとしている。ミン・ジョンホは歴史の中で何度となく繰り返される政争よりも、チャングムという不世出の医官を生み出すことこをが重要だと考えていたのである。それこそが学徳ある者(ソンビ)のすべきことだと。
漢陽に戻ったチャングムは、チャンドクにどうすべきかを相談する。チャンドクもミン・ジョンホと同様、たとえ一日だけでも王の主治医官になれと言う。並外れて優れた技術を持っていながら、「医女」であるが故に仕事そのもので評価されることのなかった彼女にとっても、チャングムが主治医官となることは大きな意味を持っていたのである。
いつも自分が望む自分でいることができず、苦しみ続けた日々を思い出し、悩むチャングム。それは彼女が初めて経験する、自分自身のための決断の時だった。
宮中では誰もがチャングムに王の命令を拒むように言う。ミン尚宮、チャンイ、ヨンセン。そして内医院の面々。そして中殿。それぞれに想いは異なっても、過去の慣例を破ることで宮中に大きな波紋が巻き起こることを危惧している点では同じだった。
大臣や儒生たちの嘆願が続く大殿で、右議政とイ・グァンヒが王に再考を迫る。だが、王はかつて世宗大王が臣下の反対を押し切って、奴婢であった蒋英實(チャン・ヨンシル)に四品の地位を与えた故事を引き合いに出し、チャングムを登用することが国を揺るがすことにはならないと反論する。蒋英實は朝鮮時代最高の科学技術者と言われ、仰釜日?(アンブイリョン)と呼ばれる日時計と、自撃漏(チャギョンル)と呼ばれる水時計の製作で知られる他、活版印刷技術も開発している。賤民身分であったが、優れた技術により抜擢され、世宗時代の科学技術の発展に大きく寄与した。世宗は今日のハングルの原型である「訓民正音」の制定でも知られているが、500年以上に及ぶ朝鮮王朝の歴史の中で最も優れた王で、国も安定していたとされる。世宗と蒋英實の故事を引き合いに出されては、右議政たちも反論のしようがない訳である。
王は更に反論を続ける。
「きっとチャングムなら左議政の勢力にも、右議政の勢力にもどちらにも傾くことなく、余の命を守ってくれるだろうと信ずる。何のために、何故反対するのだ!」これにはイ・グァンヒも色めき立つが、なまじに言葉を返してない腹を探られる訳にも行かない。そして王は改めて、チャングムに主治医官になることを命じる。
「殿下、殿下のご命令に従います」
イ・グァンヒ側の大臣たちは勿論、右議政側の大臣や儒生たちまでもがこの決定に猛反対する。中には命令が取り下げられなければ離職すると言い出す者まで現れ、右議政たちは予測した通り窮地に陥る。ミン・ジョンホはチャングムを説得するよう命じられるが、彼は殿下の命令に反対する理由がないと聞き入れない。
大妃も王の翻意を促すが、王もまた応じようとはしない。そんな中、ヨンセンが王とチャングムを何度か直接対面させていたことが大妃に知られてしまう。
シン・イクピルはイ・グァンヒに辞表を提出する。彼は王の信頼を失った以上、その座に止まるべきではないと考えていた。だが、それで納得できるものではない。
「お前の志、才能はよく判っている。だが、私の助けまで期待するな。お前に悪気はなかっただろうが、私は全てを失った」それはチョン・ウンベクも同様であった。才能があり、高い品性を備えているとは言え、チャングムはまだ医女としての経験も少ない。まして、医官としての職務も経験していないのだ。その彼女が自分たちの上位に位置する主治医官になるということは、彼らの医官としての人生を否定されるに等しいことだった。雑科とはいえ、医官は厳しい科挙に合格しなければならない。チャングムが主治医官になるということは、この制度を無意味化してしまうという面もある。
医女たちも次々と辞表を用意し始める。シンビだけは王が医女と医官が対等であることを示したのだと考え、王の考えを支持するのだが、ウンビは断固として同意しない。
チャングムが誰よりも努力を重ねてきたことはウンビも承知していた。だが、そのことと周りを巻き込んで騒ぎを起こすことは別だ。
「なぜ静かに、周りの雰囲気に合わせられないの?」
黙ったままのチャングムの代わりにシンビがウンビに言い返す。 
「どういう雰囲気ですか?殿下に良く見せようと身なりを気にしたり、医書一つ読むのにも先輩の顔色を気にする雰囲気のことですか?」それは医女という職業の中で清濁あわせ飲みながら生きてきた者と、純粋に医術だけを極めようとする者との対立であった。
王とチャングムを二人きりで面会させたことで、ヨンセンを厳しく問い詰める大妃。ヨンセンはチャングムの望みを叶えてやりたい一心でしたことだったのだが、大妃も中殿もそうは見なかった。ヨンセンは妊娠中の身であり、状況次第では中殿の座に着くことも可能な立場にあるのだ。
大妃殿からの帰り、急に昏倒したヨンセンはそのまま破水してしまう。
急ぎチャングムが呼ばれ、出産の用意が始まる。風熱の症状があるヨンセンにとって出産はただでさえ危険なのだ。
ヨンセンは苦しみながらも女の子を出産するが、途中で意識を失い、脈も停止してしまう。
事が出産だけに手助けする訳にも行かず、心配げに立ち尽くすチョン・ウンベクとシン・イクピル。
だが、チャングムの必死の処置により、ヨンセンは再び脈を取り戻す。
王の命令を拒んでいれば、こんなことにはならなかった。チャングムはただ後悔するばかりだった。
チャングムはミン・ジョンホに、王の主治医官となることを辞退すると言い出す。
「私は人を助ける医員です。人を死なせたくありません。私の志はそんなものではないのです!」
ヨンセンが無事女の子を出産したという報せに、王、大妃、中殿も安心する。そしてまた、チャングムがここでも大きな功績を上げたと知り、中殿は複雑な表情を浮かべる。
夜になってようやく意識の戻ったヨンセンにチャングムは詫びる。
「謝ったりしないで。あなたがいなかったら、私、死んでいた」
翌朝、王に拝謁したチャングムは。王命を取り下げて欲しいと願い出る。王は何か言おうとするが、言葉を発する前に長番内侍が大殿に駆け込んでくる。
長番内侍は慶源大君が危篤状態に陥ったという報せを持って来たのだ。
チャングムは再び人生の岐路に立たされていた。



第51話 「医術の心」

高熱から意識を失ったキョンウオン王子の病気の即断を避けたウンベク。中宗は皇后に、チャングムに治療を任せることを提案するが、皇后は拒む。チャングムは再び活人署(ファリンソ)へ戻ることに。しかし中宗のもとへはチョンホを弾劾する上訴文が引き続き届けられていた。中宗はチョンホを呼び出し、チャングムを支持する理由を問いただす。キョンウオン王子は天然痘と判明。治療法が確立されておらず、運良く助かっても重い後遺症が残る。また伝染病でもあることから、内医院(ネイウォン)は都の視察も始めることに。その頃すでに、都では天然痘に効果があるという薬が配布され、また予防法が広められていた。視察中のイクピルたちは、天然痘患者が集められているという西の活人署(ファリンソ)へ向かう。そこはチャングムが配属されているところだった。宮中では、キョンウオン王子の身を案じる皇后がやりきれない毎日を送っていた。わが身を省みず王子の隔離室へ向かう皇后に、中宗も胸をいためる。イクピルはそんな皇后の姿に、西の活人署(ファリンソ)で治療にあたっているチャングムの姿を重ね合わせる。

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意識を失って横たわる慶源大君。だが、突然のことでチョン・ウンベクも病の原因が掴めない。
王は中殿に慶源大君をチャングムに診させてはどうかと薦めるが、中殿はそれを断る。王の病を治療させた時は、他に選択の余地がなかったからチャングムに任せただけで、内医院への信頼が回復した今、医女に自分の息子の生死を預けることには抵抗を感じていたのである。それはチャングム個人への信頼とは別問題であった。
中殿は、チャングムを東宮付きの医女として送り込もうとしていたことを知った王が、自分と慶源大君を疎んじているのではないかと思い詰めていた。彼女には、王がチャングムを主治医官に任命したのも、自分を戒めるための奇行に見えていたのである。そして彼女は慶源大君を呪った札を王に見せ、自分の辛い立場を訴える。我が子を害そうとする者が誰なのかすら知らず、下手に騒ぎ立てれば却って宮中で孤立してしまいかねない状況で、中殿はチャングムを通じて宮中の情勢を知ろうとしたのだ、と。無論中殿の本当の狙いは東宮を暗殺することにあったのだが、宮中で孤独を深めていたことに偽りはなく、王も中殿の訴えに言葉を失う。
当のチャングムは、王の命令を辞退したことで再び活人署に復帰することになった。どんな気持ちで宮中に戻ってきたのか思い出せと、ミン・ジョンホはチャングムの翻意を促す。だが、チャングムは師や友人を苦しめてまで自分の志を貫くことはできないと答えるのだった。
王宮を去り、活人署へと戻るチャングム。
その姿を散歩中の王が見つける。
長番内侍に命じてチャングムを呼んで来させた王は、かつて幼いチャングムが酒を届けに来た時の思い出を語る。
「喜んで受け取ったが深く苦悩した、と言ったな」
「そう申し上げましたか?」
「余は悩みはせず、ありがたくもらった酒を飲んだ。飲んだらお前のことを思い出した。宮がどんな所か知っているのだろうか、と。余は宮に行きたくなくて悩んでいるというのに、酒を飲んで目覚めたら王になっていた」
「お前が酒さえ持ってきていなければ、余は王になっておらぬ。だから責任を持て」
「責任ですか?」
「そうだ、責任だ。お前は余を宮に送り込み、自分を入れろとだだをこねた。自分だけ抜けるつもりか?」
思わず笑い出すチャングム。
そして王も満面の笑みを浮かべる。王は王なりのやり方でチャングムを励まそうとしたのだった。
チャングムを主治医官にするという命令が撤回されたにも関わらず、王の元には大量の訴状が届いていた。それは全て、チャングムを主治医官にするという王の命令を唯一支持したミン・ジョンホを糾弾するものであった。
王はミン・ジョンホが15歳で司馬試(サマシ)に主席で合格した時、大殿に呼んで茶を振る舞ったことを思い出す。君主と臣下の道に関する試題に何と解答したか王から直々に尋ねられ、堂々と自分の考えを述べた少年ミン・ジョンホの言葉とともに。
王はミン・ジョンホを呼ぶと、誰もが王に反対する中で一人だけ賛成した理由を尋ねる。君主は優れた人材を適所に配置し、臣下はそれぞれの能力を生かして君主に仕えなければならない。それが少年の頃からのミン・ジョンホの信念であり、司馬試の試題に対する回答でもあった。ミン・ジョンホはその信念に従い、チャングムが主治医官となることに賛成したと答える。優れた「男」ではなく、優れた「人」が王の側にはいるべきだからだ。そして、優れた能力を持ちながら、因習や周囲の妬みに道を阻まれた人々を王に仕えさせることがミン・ジョンホの能力を生かす道であり、臣下としての務めであると。
王はミン・ジョンホの言葉に納得するが、大臣たちは一人だけ王に賛成し、今また一人で大殿に上がった彼の行動を、王に取り入るためのものとしか見ていなかった。また、右議政たちも、自分たちの立場を危うくするミン・ジョンホの行動を憂慮し、何か手を打たねばならないと考えていた。ミン・ジョンホは宮中で孤立しつつあった。
その頃、チャングムは門番の男たちが反対するのも聞かず、活人署に担ぎ込まれた乞粒(コルリプ)の子供を診察しようとしていた。
その少年を診察したチャングムは、血相を変えて少年の顔を布で覆うと、医官の元に連れて行く。少年は天然痘に罹っていたのである。
時を同じくして、慶源大君の病も天然痘であったことが判明する。感染を防ぐため、中殿には我が子を看病することも許されない。無理にでも我が子の病床に付き添おうとする中殿。大妃と王はなんとか彼女をなだめようとするのだが、自分の子が死ぬかも知れないという時に、母親が落ち着いていられるものではない。
内医院からはシン・イクピルたちが恵民署と活人署の視察に派遣されるが、天然痘は治療法も予防法も確立されていない病気だ。視察したからといって蔓延を食い止められる保証は全く無い。
チャンドクはトックの妻に頼んで、市中の酒幕に薬を配ってもらおうとしていた。天然痘の予防に効果があるかどうかは判らないが、今は試してみるしかない。日頃はがめついトックの妻も、疫病で二人の子供を亡くしているだけに軽口を叩こうともせずチャンドクに従う。
視察の途中で通りかかったチョ・チボクとウンビは、チャンドクが特効薬と偽って効き目のない薬を高く売りつけているのではないかと疑うが、逆にやりこめられてしまい、チャンドクに言われるまま西の活人署に向かう。天然痘の患者は全員西の活人署に集められているというのだ。そこにはチャングムがいるはずだと喜ぶチョ・チボクだったが、ウンビはまたチャングムが出しゃばっているのではないかと批判的だ。・・・チャングムとチャンドクの関係を知らない彼らに、この天然痘対策の背後には誰がいるのかを推し量ることはできなかった。
西の活人署が天然痘患者を集め、無償で様々な薬を配っていると知り、シン・イクピルは担当の医官に事情を聞く。それが全てチャングムの考えたことだったと知り、驚く一同。
市中では、乞粒たちにカン・ドックも加わって、手近なものを使ってできる天然痘の予防法を面白おかしく人々に伝えていた。これもチャングムの指示によるものだった。最初の天然痘感染者が乞粒の子供だったのは、このシーンの伏線になっている訳だ。チャングムが力なき人々を糾合し、自分の知識を与えることで天然痘に立ち向かっていることがわかる好シーンと言えるだろう。また、乞粒を使ったことで、「それぞれの得意なことを生かして病を防ぐ」という、ミン・ジョンホの考え方とも一脈通じる発想をチャングムが持っていることがこのシーンから想像できる。
チャングムは一人村はずれの隔離小屋の中で患者の治療に当たっていた。まだ一人一人の症状に合わせて様々な処方を試している段階で、既に一人死者も出ていたが、彼女は天然痘に感染することも怖れず自らの務めを果たそうとしていたのだ。
それを見たシン・イクピルはチャングムに対する考え方を変えざるを得なかった。
そしてそれは、チャングムに批判的だったウンビにとっても同様だったのである。
慶源大君の容体が急変し、更に病状が悪化する。中殿は周囲の制止を振り切って我が子を抱きしめ、何とか助けて欲しいと王に懇願する。王も我が身を省みず子を助けようとする母の姿に胸を打たれ、如何なる手段を使っても治療するようシン・イクピルに命じる。そしてシン・イクピルの脳裏には、天然痘に感染する危険を冒して我が子でもない患者を助けようとしている一人の女のことが浮かんでいた。
シン・イクピルはチャングムのいる隔離小屋に行き、こっそりと中の様子を窺う。大勢の子供たちが横たわる中、チャングムはその中の一人を胸にかき抱いていた。まるでその子の母であるかのように。
中殿は慶源大君に何もしてやれぬことを苦にして食事を摂ろうとしない。そんな中殿を今や最高尚宮となったミン尚宮が強い口調で説得する。周りの人間が治ると信じてこそ病は治る。先に諦めてはいけない、と。
「チャングムね!その言葉、チャングムね!」
「は?・・・はい」
「私にも同じことを言っていた。どんな患者でも決して諦めたりしないと」
そして遂にチャングムは最初に担ぎ込まれた少年を天然痘から救う。だが、それは厳密には「治療」ではなかった。彼女は病をそのまま病ませたのだ。熱が出ればその熱で発汗を促し、発疹や水ぶくれは抑えず更に出させるようにする。一人一人の症状に合わせて病を進行させることが天然痘の「治療法」だったのだ。ありとあらゆる予防法を広めたのが功を奏し、患者はそれ以降増えていない。この治療法を確立することができれば、天然痘を都から根絶できるだろう。
やっと一息ついたところに、思いも寄らぬ人物の来訪を受け、驚くチャングム。慶源大君を助けて欲しいと、中殿自ら隔離小屋まで出向いて来ていたのだ。村の入り口でチャングムが天然痘の少年を治療したと聞いた中殿は、チャングムに慶源大君を託す。
チャングムはチョン・ウンベクに代わって、慶源大君治療の指揮を執ることになった。シンビは勿論、チョドン、チョボク、そしてピソンとウンビまでもが進んでチャングムに協力する。チャングムの下で内医院が一つにまとまろうとしていた。
ミン・ジョンホはチャングムの的確な判断により、天然痘の蔓延が抑えられたことを王に報告する。そして更に長番内侍から、中殿が慶源大君のためにチャングムを呼び戻したと知らされ、王は自分の判断が正しかったことを確信するのだった。
内医院の全員の協力により、慶源大君は完治する。
チャングムを自室に呼んだ中殿は、かつて彼女に東宮を殺すよう命じたことを詫び、医員として思う存分腕を振るうようにと励ます。慶源大君が天然痘に罹ったことで、他人の子の病を利用しようとしたことの非道さと、母が子に対するように患者と向き合って来たチャングムの非凡さを中殿は悟ったのである。
今回、またも功績を上げたチャングムに、王は褒賞とともに従九品参奉の位を与え、自分の主治医官にするよう命ずる。
反対するイ・グァンヒと右議政。だが、王は聞く耳を持たず、ミン・ジョンホに教旨を作成させるのだった。
医女に官職を与えるなど、歴史に例のないことであり、大臣たちはミン・ジョンホの陰謀を疑う。右議政も彼を庇おうとはせず、イ・グァンヒらと共に抗議に向かう。
だが、今回の王の決意は固かった。
「これは我が国の根幹を成す男女の別を崩し、殿下の業績の汚点となりましょう!」
「同副承旨は聞くがよい!医女チャングムを従八品に命ずる。教旨を作成せよ!」
朝鮮王朝を根底から揺るがす間違った命令であるばかりでなく、チャングムを主治医官に任命しても、内医院は彼女に従うまいと主張するイ・グァンヒ。
だが、丁度折良く大殿に上がったシン・イクピルがその言葉が、イ・グァンヒの主張を否定する。内医院の全員が王の意志に従うというのだ。彼はチャングムの師でありながら、彼女の医員としての姿勢に打たれ、彼女の部下となる道を選んだのだ。
「チャングムの医術は母の愛でございます」
なおも抗議するイ・グァンヒに、王は更なる命令を以て応える。
「医女チャングムを従七品直長に命ずる!」今度は右議政が抗議する。
「殿下!臣 右議政申し上げます!そのような事、許されませぬ!」
「医女チャングムを従六品主簿に命ずる!同副承旨、教旨を作成せよ!」
チャングムは女性として初めて王の主治医官に



第52話 「誤解」

キョンウオン王子の天然痘を治したことから、中宗はチャングムに品階を与え、再び王の主治医を命じる。イクピル率いる内医院(ネイウォン)は王命に従うと表明。チャングムに刺激され、内医院(ネイウォン)内はやる気と活気が溢れていた。しかし大臣たちは激しく反発し、また皇太后も王殿の前に座り込んで抗議する。夜、医女の部屋にチャングムを訪ねる中宗。チャングムは中宗を散歩に誘い、王ゆえの緊張と心痛を解きほぐすべく、アドバイスする。チャングムは、心許せる相手と語らうことも勧めるが、中宗にはそんな相手が思い浮かばないのだった。中宗とチャングムが治療の一環として行っている散歩は、宮中の皆が知るところとなる。心配なチョンホ。皇太后はいっそのことチャングムを側室にするよう、中宗に進言。チョンホとチャングムの仲を知ったヨンセンは、中宗にチャングムの気持ちを尊重するよう嘆願。また皇后はチャングムに、中宗にその気がないから側室になる心配はないと告げるが……。

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大臣たちは教旨を作成してはならないとミン・ジョンホに迫る。だが、彼は王の命令は正当であるとして譲らない。イ・グァンヒはかつて世宗がチャン・ヨンシル(蒋英實)を登用した時、ただ一人王の命令を支持したクォン・ボグンが流刑に処せられた故事を挙げ、同じ目にあいたいのかと詰め寄る。ミン・ジョンホも今、クォン・ボグンと同じ立場に置かれているのである。
右議政はミン・ジョンホを説得しようとするが、ミン・ジョンホの意志は変わらない。右議政は常々身分に拘らず優秀な人材を集めようとはしていた。だが、そんな右議政にとってさえ、女性に官位を与えるなど考慮するに値しない程非常識なことだったのだ。右議政にはミン・ジョンホが私情に溺れているようにしか思えなかった。
「私情ではございません。私情を優先していたら、私はここにいなかったでしょう」右議政はその言葉に怒り、ミン・ジョンホに絶縁を言い渡すと、必ず流刑にしてやると言い捨ててその場を立ち去るのだった。これ以上ミン・ジョンホを放置しておいては、旧勢力の思う壷だ。右議政を信じて政界に復帰した同志たちまでが巻き添えになるのは避けられない。もうミン・ジョンホを切り捨てるしかなかった。
何故自分がチャングムが主治医官となることを受け容れたのか、シン・イクピルは内医院の面々に説明する。患者を治し、病を予防する志によってのみ医員は評価されねばならない。その点に置いて誰よりも無欲でひたむきなチャングムが統率することにより、内医院の医官・医女全てが更に精進できるだろう。その言葉に誰もが納得する。そして、ウンビはチャングムに追いつき、追い越そうと医書を勉強し始める。
人々の様々な思惑をよそに、チャングムはチョン・ウンベクとともに、ほとんど完治した慶源大君の世話を続けていた。慶源大君もチャングムに懐いているようだ。
その頃、ミン・ジョンホは執務室で一人教旨を作成していた。彼は筆を取りかけてその手を止め、チャングムから渡されたノリゲに仕込まれた小さな筆を取り出すと、その筆で教旨を書き始める。チャングムと自分の思いをその教旨に込めるかのように。
だが、ミン・ジョンホはその教旨を提出することはできなかった。大妃が大殿の前で席藁待罪(ソッコデジェ)していたのである。
母が子から処罰を受けることなど有ってはならない。慌てて大妃の前に跪き、すぐに止めて欲しいと訴える王と中殿。だが大妃は、母であると同時に臣下である自分には、誤った命令を下す君主を育ててしまった罪があり、王の処罰を受けねばならないと言って譲らない。王はチャングムを主治医官にするという命令を撤回せざるを得なかった。
中殿はチャングムを自室に呼んで慰める。彼女もまた幼い頃、女であるというだけで書堂に行くことを禁じられた経験を持っていた。そんな中殿には、ただ医術を極めようとしただけで宮中に混乱を引き起こしてしまったチャングムの苦悩と当惑が理解できたのである。
主治医官になることはできなかったが、少なくとも王と中殿を始めとする周囲の人々からは主治医官たるべき人物と認められたのだから、それだけでも一歩進んだことになるとシンビはチャングムを励ます。
慶源大君の世話をチャングムと交代したシンビが薬房を出た後、一人で疲れた足をさすっていたチャングムは、ふと背後に人の気配を感じて振り向く。そこには王が立っていた。慌てて裸足の足を隠すチャングム。
丁度ミン・ジョンホもノリゲを手にチャングムのいる薬房を訪ねて来るが、とても中に入れる状況ではなくなっていた。
何も出来ぬまま、ただチャングムを苦しめる結果になったことを詫びる王。
「今回のこともだが、王位に着いてからずっと余の心が晴れることはなかった・・・」チャングムはどことなく疲れた様子で話す王を散歩に連れ出す。
「この冬の寒さは厳しく、凍え死んだ民も多かったとか・・・だが、再び春が来たのだな」
「寒い冬は不幸なことばかりではありません。寒い冬の翌年は麦が良く育つのです。寒さで死ぬ民には気の毒ですが、その年は飢えて死ぬ民が減ります。寒さに耐えきれず、病に倒れる民が多かった年は、春夏秋、疫病が余り発生しません。それ故、寒い冬には寒さによる患者を診る準備を整えておけ、暖冬なら疫病に備えろと教えられました」それは自然に学ぶべしというシン・イクピルの教えだった。そしてチャングムは修練生時代に裸足で山に登り深呼吸をさせられていたことを話し、王にもそれをやってみてはどうかと勧める。
王はチャングムに言われるまま、裸足で深呼吸しながら歩き始める。
チャングムは王が話をする時いつも左手を握りしめていることから、王が心理的な重圧が原因で不眠に陥っていることを見抜き、王の心を治療しようとしたのである。そしてチャングムは王に、怒りを無理に抑えようとせず信頼できる誰かに打ち明けることを勧めるのだった。
王の元にはミン・ジョンホを弾劾する訴状が連日届けられ、右議政やイ・グァンヒは彼を配流すべきであると訴え続ける。彼らの言う通りミン・ジョンホを処罰することは、取りも直さず王の判断が間違いであると認めることでもある。王でありながら、自分の信念を貫くことが出来ない現状に王は疲れ果てていた。
夜、中殿の寝所にもヨンセンの寝所にも入る気になれなかった王は、お付きの者を引き連れて散歩に出る。
「尚膳(サンソン)は王である余がうらやましいか?」長番内侍は恐縮してしまって答えようとはしなかったが、その態度は少なくとも王を羨む者のそれではなかった。
翌朝、王はチャングムを連れて宮中を歩く。王が求めたのは、中殿でもヨンセンでもなく、チャングムと話すことだった。王にとって信頼できる存在はチャングムだけだったのである。元々彼は自分の意志に関係なく、パク・ウォンジョンらに祭り上げられて王位に着いたようなものだ。功臣たちからは望まぬ王位の見返りばかりを求められ、彼らを統制することもできない。そんな人生を送って来たことが、王に深い自責の念を抱かせるようになっていた。自分は王の器ではない、と。その自責の念が、王が左手を固く握りしめている原因だったのだ。
王とチャングムは子供の頃のことを話しながら池の畔を歩く。兎が歩けぬことを叱ったというチャングム。兄がいたため王位を継ぐことはないと思い、教育を受けることから逃げ回っていたという王。そして王は、宮外で暮らしていた頃の楽しい思い出を語る。狩りと武術に熱中し、学者や文人たちと交流し、諸国を遊覧する者について回る。そんな日々を王は送っていたのだ。
王自身は気づいていなかったが、その経験が今日の王の功績に繋がっていた。古くから伝わる地理書である『東国興地勝覧』の改訂や、天文観測器の開発、そして女真族や倭寇の撃退、海戦用火気である霹靂砲の製造。そして何よりも王は燕山君の時代に乱れた国の諸制度を正していた。いずれも民の生活を安んずるものばかりだ。
「大君としての修練は逃げても、王としての修練はお受けになったのです」今度はチャングムが王を励ます番だった。
その二人の姿を遠く離れた場所から見つめるミン・ジョンホ。
王は日常業務の報告に来たミン・ジョンホに、チャングムと知り合ったきっかけを尋ねる。倭寇の手裏剣に倒れたところを助けられた時から、ミン・ジョンホとチャングムは不思議な縁で結ばれていた。茶斎軒から戻って書庫にやって来た時、内人試験で小麦粉を盗まれた時。だがそれは王も同じか、あるいはそれ以上だったかも知れない。チャングムがいなければ王は王位に着いていなかったのかも知れないのだから。そのことを得意げに話す王。ミン・ジョンホの胸中は複雑であった。
王のチャングムに対する心理的な依存は、宮中に再び波紋を引き起こしていた。夜中にチャングムを訪ねたり、毎朝一緒に散歩をしたりしていることが大妃の耳に入ったのである。大妃は王が一線を超えてチャングムに惹かれていることを見抜いており、チャングムを側に置きたいなら正式に後宮として迎え入れるべきだと王を叱りつける。
早速その噂を聞きつけたチャンイは、ミン尚宮やヨンセン、トック夫妻に伝える。ミン尚宮はともかく、チャングムとミン・ジョンホの関係を知るトック夫妻は気が気ではない。トックの妻は同じ妾になるなら後宮の方が幸せだとは言うのだが・・・。
チャングムが後宮に入るという話は程なく内医院にも知られることとなった。シン・イクピルらはチャングムを医員として残してくれるよう王に意志を伝えようとするのだが、後宮に入るとなると内命婦(ネミョンブ 位階を与えられた宮中の女性の総称。中殿が統轄し、任命権を持っている)の問題になるため、王も口出しはできない。
宮中の一角ですれ違うチャングムとミン・ジョンホ。暫く見つめ合うと、お互いに言葉を発することもできないまますれ違って行く。
中殿はチャングムの望みが医術を極めることだけであると知っており、王にその気がないのだから無理に後宮に入らせるようなことにはしないとチャングムに約束するのだが・・・。
チャングムはここ数日の行動が大妃の誤解を招いたのだから、再び活人署に戻して欲しいと王に頼む。だが、それは必ずしも誤解ではなかった。王はチャングムに惹かれていたのである。
チャングムが後宮に入るというのは、大臣たちにとっても波風の立たない円満な解決法だった。チャングムの後宮入りと、ミン・ジョンホの弾劾。この件に関する限り、本来対立勢力であったはずの右議政一派と、イ・グァンヒ一派の意見は一致していた。
指が裂けて出血しているのにも構わず、怒りをぶつけるかのように弓を引き続けるミン・ジョンホ。もう彼の力ではチャングムをどうすることもできない。
弓の弦で傷ついた指をチャングムに治療してもらいながら、ミン・ジョンホは考えていた。
「あの時、手を離すのではなかった。もう二度と握りしめることができないかも知れない・・・」
トック夫妻からチャングムとミン・ジョンホのことを聞いたチャンイは、それをヨンセンとミン尚宮に伝える。早速チャングムを呼び出したヨンセンは、彼女の気持ちを確かめようとする。
思わず泣き出してしまうチャングム。・・・幼い頃からチャングムに助けられてばかりいたヨンセン。今こそチャングムを助けなければ。
ヨンセンは王に面会し、チャングムがミン・ジョンホを慕っていることを王に伝えてしまう。本人の望む道を進ませ、愛する人と幸せに暮らさせてやって欲しいと王に頼むヨンセン。その言葉は王にとってまさに青天の霹靂であった。
そして、王はチャングムと二人きりになった王殿で彼女に尋ねる。
「・・・同副承旨のミン・ジョンホを慕っているそうだな」チャングムはしばしの間をおいて答える。
「・・・はい、殿下」

 

 

チャングムに後宮入りの命令が下される日の前夜、王は長番内侍に王殿からの人払いを命じ、チャングムを呼んで来させる。 

チャングムへの愛を自覚した王。果たして王はどんな決断を下すのか・・・。